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~ちょっと寄り道~ ミスや失敗は誰にでもある

更新日 2022年7月2日

お子さんによって、何に困り感を感じるか(感じないか)は様々です。あるお子さんにとっては苦も無く出来ることが別のお子さんにはなかなかうまく出来なかったり、多くのお子さんにとって気にならないことがそのお子さんにとってはすごく気になったりすることがあります。こういうことは、実は大人でも結構あるんだ、と感じた出来事があります。その人の気持ちの持ちようによって大きく変わることがあるというスポーツの話です。

私の知り合いに、ゴルフが大好きな人(Aさん、としておきます。)がいます。先日お会いした折、私も仲間に入れたいということでしょうか、いろいろと熱心に話をしてくれました。私にはゴルフのことがよくわからないのですが、伺っている中に興味深い内容がありましたのでご紹介します。

ゴルフというスポーツは、その人の技量によってスコアが変わるのは勿論だが、精神的なものが左右する可能性がとても高く、特に初心者の場合は顕著に出る、というのがAさんの意見です。

Aさんにはよく行くゴルフ場があり、その中のいくつかのホールには池が配置されているそうです。Aさんには、よくボールを打ち込んでしまう池があるそうで、そのホールに行くと、いつもこの池が気になるそうです。そして、今日は入れないぞ、と思って打っても、どういうわけかよく入れちゃうんだよ、と言っておられました。苦手だという意識があるので、知らず知らずのうちに緊張してしまうのか、体の動きが何か他のホールと違うらしいのです。無意識のうちに腕に力が入ったり、体の向きが池のほうに向いたりしているのでしょうか。吸い込まれるように池のほうにボールが飛んでいってしまうことがあるそうです。ところが、ほかにも池が絡んでいるホールがあり、そのホールの池の中にはたくさんのボールが落ちているらしいのですが、Aさんは、この池だけはこれまで一度もボールを打ち込んだことがないそうです。

不思議ですね。人によって、気になる池と気にならない池があるようです。たくさんの人がボールを打ち込んでいる池なのに、なぜAさんには気にならないのか尋ねたところ、この池はティーショット(第一打)を打つ場所(ティーグラウンドといいます。)のすぐ前にあるので、大きな池だけれども普通にクラブにボールが当たれば上を超えていくので、池はあってもないもののように感じているそうです。ところが、Aさんがよくボールを入れる池は、グリーンの近くにあり、距離を間違えたりミスショットをしたりするとすぐに捕まってしまうのだそうです。

ゴルフコース上にある池や川などを、英語ではウォーターハザード(water hazard)、またはペナルティーエリア(penalty area)と呼びます。hazardとは、危険なもの、危険要素という意味です。ボールが入ってしまう危険がある場所がゴルフコース内には点在しているのですが、危険と感じるか、その危険な罠にはまりやすいか否かは人によって違う、ということです。Aさんの場合、ティーグラウンド前の池は当然越すことができるという自信と安心感があるから、危険を危険と感じないでプレーできます。ところが、別の人にとっては、第一打を打とうと思ったら前に大きな池があるのでプレッシャーを感じ、動きがぎこちなくなってミスを犯す、ということになるようです。

では、どうすればhazardを回避できるようになるのかと伺ったところ、Aさんの意見は、一つ目はゴルフの腕を上げること、二つ目は自分なりの攻め方(攻略法)を身につけること、三つ目は自信を持ってプレーすることだそうです。自分なりの攻め方とは、このホールはこうやって打てばいいんだ、無理にグリーンを狙わずに池の前にボールを止めればいいんだ(例えば、絶対に池まで届かないような、短い距離しか飛ばないクラブで池の手前にボールを落とす。)など、自分の技量に応じた安全な攻め方をしていけばいいのに、欲張って一か八かでグリーンにのせようとして打っていくから自分はダメなんだ、ということでした。また、自信とは、今度もまた池に入るのではないか、失敗するのではないかと考えてしまうことで余計な力が入ってミスを引き起こし、さらに苦手意識が高まる、という悪循環を断ち切らなければいけない、ということでした。うまく打てた経験をたくさん積んでいけば、hazardもhazardではなくなるということです。

この話、きらりをご利用中のお子さんにも当てはまるところがあるように思いませんか。お子さんによって、何に困難さを感じるかは異なります。あるお子さんにとっては何でもないことが、別のお子さんにとってはすごく苦痛な内容(ゴルフ場でいうhazard)になることがあります。何に苦手意識を抱くかは、人によって異なります。ただ、成功体験を積み重ねることで自信を高めたり、学習の力や技能(たとえば手先の器用さなど)を高めたりしていくことで、苦手だと思っていたことも苦にならなくなる場合があります。

ただ、いくら頑張っても無理なこともあります。ゴルフの場合だと、Aさんは大体200ヤード(183メートルほど)弱しかボールを飛ばすことができず、どんなに頑張ってもプロのように300ヤード(274メートルほど)も飛ばすことはできないそうです。ただ、高反発のドライバー(反発係数が高いためにボールを遠くまで飛ばしやすいクラブ)というのがあるようで、それを使うともっと距離を伸ばせそうなので使ってみたい、と話していました。その人の力を補助する道具を使うことで、もっとうまくいくことがある、ということです。お子さんも同じで、苦手なところを補う道具や手段を見つけることで、もっと楽しく活動に取り組むことができる場合があります。良い道具や手段との出会いがその人の力を伸ばしたり自信をつけたりするのに有効だ、ということです。

最後に、こんな体験談を紹介します。以前、お父さんがツアーに出ているプロゴルファー、というお子さんを担任したことがあります。この方は、ツアーでの試合について、「ミスや失敗は誰にでもあるので、試合中にそれを気にして引きずっていてもしかたがない。要はバーディー(既定の数より少ない打数でカップインすること)が取れるかどうかだ。」と言っておられました。自分のイメージ通りに打つことができた、そういう機会を着実にものにしていくことが勝負のかなめ、ということです。失敗に目を向けるのではなく、うまくいった体験を着実に積み重ねていくことが大切、というお言葉だと思います。ゴルフに限らず、お子さんにとっても大切なことですね。【山】

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