保護者交流会の話題の続きになります。前回は、合理的配慮について、園や学校に積極的に伝えてみましょう、と書きました。今回は、普段のお子さんの様子から、そのお子さん特有の傾向や困り感をどのように捉え、園や学校にお願いする支援内容をどう決めだしていくかについて、最近行われた支援会議での話し合いを例に考えてみます。かなり詳しい内容が入るため、個人の特定を避けるための配慮を行っています。また、この内容につきましては、保護者の方にもご了解をいただいていることを付言しておきます。なお、これは私が考える筋道で、まったく別の考えをされる方もおられます。
今回ご紹介するのは、年長の女の子(以下、「Aさん」と記します。)の支援会議でのやり取りです。出席者はAさんのご両親、園の先生方、市の巡回相談員、コーディネーター、相談員、児童発達支援の事業所(2か所)の職員(うち1名が私)です。
支援会議では、そのお子さんの家庭での様子に加え、園や学校、児童発達支援や放課後等デイサービスといった事業所の職員など、いろいろな方の目で見た様子をもとに、支援の方向性を出していきます。異なった環境下でのお子さんの様子を見ている方が、それぞれの見方を出しますので、とても参考になります。一人のお子さんが、それぞれの場所で違った姿を出していますが、どれもそのお子さんの姿です。まずは、それぞれの場所での様子、すなわち、その支援者から見た事実を確認し、その事実を受けて、そこにそのお子さんなりの気持ちや動き方、考え方、困り感などが共通して現れてないか、違いがみられる場合の要因は何かを考えていきます。そのお子さんの行動を読み解くヒントや支援のための「仮説」を導き出す段階です。
Aさんの支援会議では、以下のような話題が出てきました。事実とその支援者の見方が混在していますが、そのまま書きます。また、支援会議では、このお子さんはこういうことをする、という意見が多く出るのですが、こういうことはしない、という見方が出るともっと深まります。しないことの中に、その子の本質的な部分が隠れていることがあるからです。ただ、その子が行うことは容易に気づくことができても、しないことは注意して観察していないと分かりません。
①ずいぶん落ち着いてきて、気持ちの切り替えが上手にできるようになってきたとはいえ、まだ衝動性や多動性が見られ、目についたものに飛びつくことがある。親としてはこの点が大きな悩みだ。
②多動性や衝動性を抑えるために、投薬も行っている。薬の量を少し増やして1か月ほどになる。様子を見ているところ。
③園でゲームをしていたとき、ルールがわからずにカッとなって石を投げてしまったことがあった。また、家でゲームをしていても、負けそうになると荒れてくることがある。特に母には強く当たることがあるため、父が一緒にゲームをするようにしている。
④まだ幼い弟がいる。そのためか、自分を見てほしい、という思いが強いようだ。
⑤児童発達支援の事業所を2か所使っている。1か所では集団活動をしており、年下のお子さんのリーダーとして積極的に活動に取り組んでいる。もう1か所は個別での支援を行っており、パーティションに仕切られた中で落ち着いて活動している。
⑥園では、行事の練習にもずいぶん落ち着いて取り組むようになった。年中の頃は、音楽会に向けたクラス練習の時に、他の子と一緒に活動する時間がとても短かった。
⑦今年も音楽会に向けての練習をしている。クラス全員での練習の時、列の後ろに座っていると落ち着かないことがあるものの、前の方だと落ち着いて座っていることができる。タンバリンをたたくとき、立ってたたくのではなく、座って演奏したのも良かった。
⑧視覚支援を行い、次に何をするかを見てわかるように示したことで行動が落ち着いてきた。ただ、活動と活動の合間の時間には落ち着かないことがある。
⑨2つの事業所ではパニックになる様子は見られないが、園ではパニックになることがあり、その場合にどう対応すべきか、どうすれば気持ちを静めることができるかが悩み。家庭でも、ゲームで負けそうになって気持ちが切れた時の対応に難しさを感じている。
⑩小学校では支援級に籍を置くが、原学級も使っていく予定。具体的な使い方は、今後、学校と相談していく。
このような話が出てきました。この中に、今後の対応を考えていくうえでのヒントが出ているように思います。支援の可能性、仮説となるもので、この仮説に基づいて支援を行っていきます。仮説は、合っている場合もあれば間違っている場合もあります。合っていればその方向で進めばいいですし、間違っている場合はどこが違うのかをお子さんの反応を見ながら考えることで、次の方向が見えてくることがあります。私は、次の3つの仮説を考えました。(その3の2に続く)【山】