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その子の様子をどう考えるか(保護者交流会での話し合いから:その3の2)

更新日 2022年10月15日

 前回の続きです。

(1)衝動性を抑えるために、視覚刺激の量を減らす工夫をしてはどうか。

 ①と⑤、⑦、⑧から、視覚支援は有効であっても、視覚刺激が多すぎると落ち着かなくなるように思われます。きらりでは、パーティションという視覚刺激が制限された中にいるため、落ち着いている可能性があります。音楽会の練習で後ろの席で落ち着かないのは、前の子の様子が目に入ってしまうためで、前に座ることで先生に注意を向けやすいのかもしれません。⑧の視覚支援も、何に着目するかをはっきりさせることで、他の刺激を一時的にシャットアウトする効果があると解釈することも出来ます。Aさんの場合、聴覚刺激よりも視覚刺激の量が問題のように感じます。

 もしこの考え方が正しいとするならば、Aさんが座る場所は前の方で、先生が示す視覚的な指示がわかりやすい位置にすることが有効でしょう。パニックになったときは、誰もいない場所や刺激の少ない場所(パーティションで区切られた場所など)でしばらく過ごしてもらう方法が考えられます。先生が声をかけるとしたら、パニックになった時ではなく、落ち着いた後でしょう。

 今後、小学校との支援会議があるはずです。小学校には、普段の様子をお伝えすることに加え、小学校の教室での机の位置は前にしていただけると落ち着くかもしれないとお伝えすることが考えられます。前といっても、先生の前がいいか、真ん中の列がいいか、出入り口に近いのがいいかは、上記の事実だけでは何とも言えません。教室にいるのが何らかの理由で苦痛になる可能性があるなら、出入口に近い方が良いかもしれません。また、パーティションのある場所や一人になることができる場所(支援級でもよい)を本人が使えるようにしておき、パニックになったときや疲れてしまったときに行くことで気分転換ができるかもしれない、とお伝えするのもよいかと思います。

 また、⑦や⑨から、同年齢のお子さんの動きをかなり気にするようにも思われます。年下の子(弟さんは別)に対してはリーダーとして活動しているのも、年下だと安心できるという気持ちの表れかもしれません。ただ、この点についてはいま一つはっきりしません。事業所で会う年下の子は少人数なのが普通のため、大人数の子が苦手、という可能性もあります。⑧の、活動と活動の合間の時間が苦手なのも、何をしたらいいかはっきりしないことが嫌な場合もあれば、多くの子が周りでワーッとなっているのが嫌だという場合もあります。同い年の子を気にするという場合、周りの子に関心があるため、模倣して行動しようとする気持ちが強くなっていくこともあります。このあたりは、今後、様子を見ていくことになります。

(2)ほめるタイミングを工夫したり、本人が安心して活動できる環境を作るための工夫をしたりしてはどうか。

 自分を見てほしいという気持ちが強い、うまくいかないと荒れだすことがある、しかし、気持ちの切り替えがうまくなった、という様子(④や、⑤のきらりでの様子)から、こんな手も考えられます。

 ⅰ)小学校での体験の時に仲良しの先生(来年度も在職していそうな先生がよい。)を作っておき、入学式当日にAさんに声をかけてもらうことで、小学校の先生方が僕を待っていてくれたんだ、ぼくを見てくれているんだ、という第一印象を持ってもらいます。本来この役は新1年の担任の先生にお願いしたいのですが、入学式までは誰が担任かわからないため、他の先生の力をお借りします。小学校入学後2週間が最初の勝負の時期です。入学後は原学級担任だけでなく、支援級担任ともしっかり連絡を取り、本人の気持ちを支えていきたいところです。

 ⅱ)パニックへの対応方法です。本人が荒れたりパニックになったりしたとき、大人は𠮟りつけたり、パニックを抑えようと声をかけたりしがちです。自分や他人を傷つけるようなパニックは止めなければなりませんが、パニックが落ち着いたあとの対応が大切です。気持ちの切り替えがはやくなってきたAさんですので、パニックが落ち着いた時にこそ褒める、という方法が有効だと思います。よく我慢したね、えらいぞ、そんな励ましの言葉で、たくさん褒めてみましょう。ここで大切なのは、パニックから立ち直った自分を周りが褒めてくれたことで、自分を見てほしいという本人の気持ちも満たされるということです。

 パニックになったらスルーすればよいという考え方があります。確かに、周りが関心を示さないことは、パニックを減らすためには有効な場合があります。しかし、私はパニック後の対応が大切だと思っています。また、スルーする場合、注意しなければならない点もあります。お子さんによっては、パニックを起こすことで周りの関心を自分に向けている、という場合があります。このような場合、大人がスルーすると、お子さんは、これまでパニックを起こせば周りの関心を引くことができたのに、反応がないのはなぜだろうと考え、一時的にもっと強いパニックを起こすことがあります。ここで大人がスルーせずに𠮟りつけるとお子さんの思うつぼ、ということになります。より大きなパニックを起こすことで、周りの関心を自分に向けることに成功したわけです。これは避けなければなりません。大人にも、お子さんの動きについての見通しが必要です。

(3)何をするかがはっきりしていたり、見通しが持てたりすると行動しやすい。

 小学校入学当初は緊張していてあまり目立たないけれども、少し慣れてくると多動性や衝動性が出てくる、というお子さんが見られる。Aさんの場合、⑧のように、活動の流れを視覚的に示してもらうことで見通しを持って安心して活動できるようです。このあたりは、園や事業所でどのような工夫をしたらうまくいったのか、逆にうまくいかなかった場合はどんな手立てを打ったときかなどを、学校に知らせていただくのが有効になります。きらりのような1対1の場面ではなく、集団の中での様子のほうが参考になるはずです。また、⑧のように、活動の合間の時間を持て余すようなら、支援級に行って活動してもよいと伝えておくのも有効になる可能性があります。

 一部、論理の飛躍がある部分もありますが、とりあえず(1)(2)(3)と3つの可能性を出してみました。ある意味、当たり前のことかもしれませんが、いかに具体的に学校等に伝えられるかと、そう考えた根拠をお子さんの様子の中から見つけておくことが重要です。

 また、Aさんの場合、衝動性を抑えるためにも、支援級をいつでも使える状況にしておくのはよい考えだと思います。もちろん、支援級だけが落ち着ける場とは限りません。このあたりは、これから学校と相談していくことになります。

 一次障害は、改善することがなかなか難しい場合もあります。ただ、そのお子さんの困り感や行動の傾向を周りが知って、本人が生活しやすいように様々な配慮をしていくことで、その困り感を小さくしていくことはできると思うのです。そのために、合理的配慮をお願いしたり、その子の様子を進学先にお伝えしたりしていくことは大切だと思います。(完)【山】

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