「漢字が正確になかなか書けなくて」。お母さんのまず第一声がこれでした。こういうふうに言われる保護者の方って多いんですよ。
このお子さん、確かに全体のおおまかな形をとらえているのですが、「とめ」「はね」や、細かい部分での間違いがありました。「学習障がい」という診断もおりているとのこと。まずお話したのは、「とめ」「はね」などの細かい部分にはあまり気にしない方がよいということ。
そして、あまり細かく指導すると、漢字そのものが嫌いになってしまうことや文科省も「漢字の読みは習った学年で習得するが、書きは次の学年までで習得すること」をねらいとしていることもお話しました。これは案外ご存じないのですが、文科省が出している、学校の先生が指導の指針としている「学習指導要領」というものにちゃんと書かれています。つまり2年生で習った漢字は3年生終了までに書けるようになっていればいいということです。だから本来、漢字の書き取りテストは習った1年後に実施すればいいのです。テストがあると、どうしてもテストまでにマスターしなければと思うのですが、文科省は「1年後でよい」と言っているのです。
まずは読めることが先です。考えてみてください。読めないものは「記憶」できません。書くことは、まず読めるようになってからで、その漢字を何度か読んでいるうちに書くこともできるようになってくると文科省も考えているわけです。ごくごく当たり前のことです。漢字ドリルで練習したから書けるようになるのではなく、使っているうちに書けるようになってくるのです。
そういうものだいう前提で、漢字の学習支援を続けているわけですが、そのお子さんを見ているといろんなことがわかってきました。
「漢字のかくれんぼ」という「きらり」多治見校のオリジナル教材があります。漢字の一部分を隠して、なんという漢字かをあてる教材です。このお子さん、これものすごく得意です。
また、昨日ご紹介した、「漢字ドロロンパ」もメモしなくても、全部漢字が出てこなくても「あっ、〇だ」とパッと当ててしまう。全体の形をとらえる力ってすごいんです。細かいところなんか見なくても、全体のだいたいの形を把握しているのです。教材を作成した私が、出題しながら「あれ、これなんていう字だったっけ」と困惑しているのに、このお子さんは「◎だ」とすぐにわかるのです。
「細かいところに気にしないのが漢字指導の前提」と最初に書きましたが、このお子さんに関しては「細かいところに着目させる」ことが必要なんじゃないかと考えました。おそらく普段も、細かいところを気にせずに生活しているのだろうということが予想できます。お母さんにこの話をしたら「その通りです」とびっくりしてみえました。
そこでこんな支援を続けています。漢字は細かく分けると14のパーツからなっています。(下のプリントをご覧ください)
この14のパーツを最後まで「書ききる」というトレーニングをしています。メトロノームのリズムに合わせて「よーこ」「フハネ」などと唱えながら、最後まで鉛筆を離さないように書く練習です。下敷きに「サンドペーパー」を敷いて練習しています。サンドペーパーのガリガリという感覚が気に入ったようで「240番でお願いします」とお気に入りの「サンドペーパー」使って、漢字のトレーニングを行っています。