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「家では𠮟りつけてしまうんです」

更新日 2022年11月5日

 支援会議や教室内で保護者の方のお話を伺っていると、私の気が付かなかったことや思いもよらないことを伝えていただくことがあり、とても勉強になります。今回は、そんなエピソードの中で、私にとっては大きな後悔の種になっている内容をお伝えします。

 ある支援会議で、自己肯定感を下げないことが大切という話になったところ、会議に出席していたある保護者の方から、「家ではどうしても、『ダメでしょう。』とか、『なんでできないの。』と言って叱りつけてしまうんです。これからは言わないように気を付けます。」というお話が出てきました。このお話を伺って、私たちの言葉が足りなかったなと反省し、すぐに口をはさみました。「お母さんがそう言いたくなるお気持ちは当然ですよ。叱ることは少しも悪くないです。でも、○○さん(お母さんのお名前)は、いつもあんなに励ましておられるじゃないですか。工作を持ってきたらすごく褒めてくださいますよね。それでいいと思うんですよ。お子さんだって、とても素直ないい子じゃないですか。」と。

 学校の先生も事業所で支援する者も、保護者の方とは違い、あまり良い言い方ではないのですが、一歩引いて少し客観的にお子さんを見ています。他のお子さんの様子がわかっているからです。そのため、ほかのお子さんだってそうですよとか、こういう例もありますよ、とお伝えすることがあります。ところが、自分のお子さんとなるとそうはいきません。ほかの家のお子さんなら落ち着いて見ることができても、自分のお子さんではそうはいきません。なんでできないの、と言いたくなります。

 思うに、そのお子さんに対する思いや願いの強さに関係するような気がします。私がある小学校で6年生の担任をしていた頃、児童会の役員に選ばれた女の子がいました。この子は力がある、もっとできる子だと思っていた私は、ずいぶんその子にいろいろなことを要求し、もっとできるだろうと何回も繰り返し伝えていました。そのため、だんだんその子は委縮してしまいました。ある時、同じクラスの女の子に、「先生、そんなに〇〇さんにきつく言っちゃだめだよ。」と言われ、しばらくしてから深く反省しました。この子はもっとできるはず(なのにどうしてやろうとしないん)だと思い込んでいたために、もっと上に引っ張り上げようと必死になっていました。自分では励ましていたつもりでも、その子にとっては言われるのが辛かったに違いありません。そこに気が付くことができませんでした。

 実は、このお子さんの弟さんには重い障害があり、どうしてもお母さんは弟さんに関わる時間が長くなり、このお子さんは姉としてじっと我慢していました。今考えても、本当に申し訳ないことをしてしまったと、後悔してもしきれない思いです。

 親が、自分のお子さんへの思いが強くなるのは当然です。そのため、「なんでできないの。」と言いたくなるのもごく自然なことです。自己肯定感を高めるためには褒めることが大切、という話になることが多いため、叱ることがあたかも悪のように感じてしまうのでしょう。ただ、大切なことは、叱らないことではないと思います。良くないときは叱ってもいい(本人の心を深く傷つけるような言い方は避けたいところですが。)ので、褒める時は心からたくさん褒めてあげましょう、ということです。この点だけは許すことができない、という線を親や先生が持つことも必要です。その代わり、頑張ったときやうまくできた時には心から褒める、心配そうな顔をしているときには、支えになってそっと背中を押してあげることが大切です。

 きらりには、入口でお母さんにギュッと抱きしめてもらった後、両手でタッチしてから中に入る、という園のお子さんがいます。工作で作品ができたあと、保護者の方に見せようと走っていくお子さんが何人もいて、保護者の方は、そんなお子さんの作品をニコニコしながらすごく褒めて下さっています。素敵な世界です。

 良くないこと、もっとできるのにと思うときは、遠慮なく(やりすぎない程度に)叱っていいと思います。そして、褒めるときは大いに褒めましょう。お子さんが不安な時は、そっと背中を押してあげましょう。保護者の方のこういう気持ちは、きっとお子さんに伝わると思います。【山】

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